地歌。光崎検校作曲。三味線曲。 筝曲「菜路」の打ち合わせ曲です。歌詞は、菜路のパロディーです。源氏物語より引用し、愛する姫の没後、夢の中で幻を見、夢覚めて嘆くさまを歌った曲です。かなわぬ恋の悩みで、揺れ動く心を、まず仏教の無常観で鎮めようとするが、抑えられない、恋人の面影、袖の香に執着する我が心に慨嘆し、時雨も紅葉も山風も、かなわぬ恋の恨みの種にしかならない、最後には夢が頼り、そして呪(まじな)いが頼り、と言った内容です。「夕べの雲」とは、定め難いものの意に用いられ、亡き人の火葬の煙を指すことも多くあります。幕末の復古主義が、箏曲界にも、地歌三味線に従属した従来の箏のあり方を改める純箏曲復興の動きの中で「五段砧」や、「秋風の曲」などを作曲した光崎検校はその先駆けでありました。しかしながら、職屋敷から譴責され、京都を追われ越前の国に退くことになった。この曲はその頃の作品と言われるが、三味線の曲でありながら、純粋の箏の音楽である組歌の「菜蕗」と合奏されるように作られている点など、光崎の反骨がうかがえる一曲です。。

夕べの雲【YUbe no Kumo】独奏・・瀬端淑子

【歌詞】

 うしと見るも月の影、嬉しと見るも月の影、 うす雲たなびきて、心のいろぞほのめく。

 ゆかりうれしき面影、ひきとめし袖の香わすられぬ、 情にあはれを知るもことわり、

 あふごとにしぐれして深くそむる、 紅葉吹き散らす、山風こころなきもうらめし。

よもすがら、つくづくとありしよのこと思ひ寝の、 夢に見ゆる面影、如何にして我ねやへ、

 来ることの嬉しさ、はかなくも夢さめて、 かすかに残るともしび、夢に見しふしども、

 さめて寝ねたるふしども、変らぬぞ悲しき、 さめて姿のなければ、まぼろしの姿も、

 夢路ならではいかで見ん、絶えてかはさぬ言葉も、 あづさにかけてかはさむ。

【その他の演奏形式】

    二重奏(三絃+尺八)~https://youtu.be/Js7gDu5fKeg